温泉ソムリエのウェルネス旅録(シックスセンシズ京都) vol.2
チェックインの瞬間から、ここでは何かが違うと気づく。
フロントのスタッフが差し出したのは、京都・天香堂の塗香(ずこう)だった。手のひらに香を擦り込み、ゆっくりと吸い込む。その数秒間で、旅の時間が動き始めた。
香りというのは不思議なもので、言葉より先に体に届く。塗香の静謐な香りが鼻腔を抜けた瞬間、「ああ、ここはそういう場所なのだ」と理解した。説明を聞く前に。
館内では1日5件ほどのワークショップが開かれている。その多くはいわゆるコンプリメンタリー(無料)。だけどそういう言葉が霞むほど、世界観が丁寧に作られている。クリスタルボウルの音響を使ったボディバランスのセッションでは、音が身体の奥へ降りてくるような感覚があった。瞑想が苦手な人でも、音に乗っていれば自然と深いところへ連れて行かれる。
スパエリアには、40℃前後の温浴から15℃の水風呂、ドライとミスト両方のサウナが揃う。けれど私が最も心を奪われたのは、温度でも施設の充実度でもなく、ヒノキの香りと水音の設計だった。五感のうち、どこを起点に体験を組み立てるか。少なくとも私には、「香り」と「音」から始まっているように感じられた。
ターンダウンサービスで寝室に香りが広がり、朝には京都産オーガニック野菜の朝食が待っている。酒粕を使ったフェイシャルケアがあり、ガーデンのハーブがティーカップの中に入っている。館内はプラスチックフリーを徹底していて、そのことに気づいた時、「引き算の美学」という言葉が頭に浮かんだ。余計なものを取り除いた先に、本当に必要なものだけが残る。これらは「エシカルな取り組み」として添えられているのではなく、体験の本体として機能している。持続可能性とウェルネスを分けて考えていないのだ。
そういう思想の一貫性は、滞在中ずっと静かに、しかし確実に伝わってくる。
帰宅後も、購入したアロマオイルをディフューザーに落とすたびに、あの空気が戻ってくる。旅が終わっても、香りだけは日常の中に居続ける。それもまた、ひとつの設計なのかもしれない。
#SixSensesKyoto #KyotoLuxuryHotel #WellnessTravelJapan #HotelSpaExperience #SustainableHotel
