温泉ソムリエのウェルネス旅録(ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ) vol.1
大分・別府に降り立つと、白い湯気が街の角から立ち上る。さっきまでの移動の疲れまで、湯けむりに溶けていきそう。山の斜面からも住宅地の隙間からも、ふわり、ふわり。街が深呼吸しているようだった。
高台の客室に入ると、海(別府湾)と山の間に、無数の湯の点が灯っている。眺めているだけで、肩の力が抜ける。
部屋付き露天の塩の湯(ナトリウム‐塩化物泉)は、芯まで温めて、湯上がりの熱を連れて帰れるタイプ。pH8.7の弱アルカリ性で肌あたりがやさしく、メタケイ酸の“しっとり”があとを引く。
竹細工の灯りや籠が、モダンな室内にさりげなく影を落とし、旅先の輪郭をくっきりさせる。ラウンジでは、りゅうきゅうやおおいた和牛を少しずつ。土地の味を、丁寧に。
夜、大浴場の露天で湯けむり越しの灯りを眺めた。光の海が、温泉と一緒に暮らしてきた時間の厚みを語ってくる。プールもジムもサウナも揃っているのに、いちばん贅沢なのは、何もしない静けさかもしれない。
”整う”とは、何かを足すことではなく、本来の自然のリズムに戻ること。別府は、それを静かに元へ戻してくれる街だと思った。
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